次は非人間化を簡単に説明します。非人間化は「そんなことするなんて、ホント最低だよ。虫けら以下だよ」なんて、ドラマや映画、小説やアニメでもよく耳にする言葉です。
この後、アニメやドラマなんかで続くセリフは「あんな奴は生きる価値はない。叩き殺してやる」なんてのもよくあります。
人だと思うと出来ないような事も、「虫けら」=「価値のないもの」なら殺しても構わないという心理が働く事ですね。これは「虫けら」というラベルを貼ることで、人に対しては決して出来ないような残虐な行為も出来てしまうということです。
アドルフ・ヒトラーなんかがよく使ったものでもあります。「劣等人種(人間以下)」「獣」「虫けら」「病気」になぞらえるなど、非人間化により、人に対して決して出来ないような行為もさせてしまいました。
ヒトラーだけでなく、誰もが「虫けら」「ネズミ」「ゴキブリ」「ヘビ」「ゴミ」「クズ」などとレッテルを貼ることがあります。しかし、レッテルを貼れば無意識に集団から排除しようとしたり、行き過ぎる行為に人を走らせる危険性もあることを常に頭に入れておかなければいけないと思います。
では、誰にでも解りやすいように、この二つの心理が働くような場面を考えてみましょう。
例えば〇吉君はグループ〇に属している。
×男君は×グループに属している。
〇吉君は×男君に嫌がらせをされた。
〇グループはメンバー全員結束が堅い。仲間思いでもある。
〇グル―プのメンバーは×男君をこらしめようとする。
×グループもまたメンバー全員結束が堅い。仲間思いでもある。
当然×男君を〇グループから守ろうとする。
この時点で、〇グル―プのメンバーの敵は×男君だけでなく、×グループメンバー全員。
〇グル―プには〇吉君が×男君に嫌がらせをされた事実があり、バックには「正義がある」。
敵対するうちに、×グループのメンバー全員は「ひどい奴ら」から「人間じゃない、虫けら以下」となる。
×グループの×男君が、〇グループの○吉君に、嫌がらせをしたのにも関わらず、本来はいじめられてもいない〇グル―プの〇介君が、いじめてもいない×グループの×蔵君に、「行き過ぎた、残虐な行為をしてしまった」。
こんな事もあるかもしれません。よくある感じのストーリーですが、このグループのメンバーの一人一人の性格とか人柄といった、個人の「悪」とは別な事。
誰もが「悪」になり得る可能性が、没個性化と非人間化だけでも説明がつくと思いませんか?
この没個性化と非人間化の心理が働くだけでも「何であんなひどい事できるんだ」なんてことが起きるのではないかと思います。
誰しも、このようなものが働けば、「非道」とも言える人になってしまう危険性もあるのではないか?というお話です。