「ひとの気持ちが聴こえたら」ジョンエルダー・ロビソン / 高橋知子 という、実話を基にした本があります。
岡田斗司夫さんがユーチューブでも取り上げられていましたね。TMS(経頭蓋磁気刺激)という脳神経の治験を受け、体験したノン・フィクションです。

著者でありこの本の主人公のロビソンさんは、音学関係で成功し、ゲーム業界でも才能はあるものの対人関係から転職し、自動車修理会社を営むようになります。
ロビソンさんは昔から人との関係が上手くいかず、友人もできず、何時も人から「つまはじき」にされていました。自分でもその事を理解していましたが、アスペルガー症候群と診断されたのは40歳の時だったそうです。

そこから、その経験を基にアスペルガー症候群の体験記や自閉症に関することをまとめた本も書き、成功します。そして色々なワークショップにも呼ばれるようになりました。そのワークショップでべスイスラエル病院で成人の自閉症患者の知能指数を上げるプロジェクトを行っているリンジー・オバーマン博士と出会い、TMS(経頭蓋磁気刺激)の脳神経の治験を受ける事になります。

アスペルガー症候群とは発達障害の一つで、コミュニケーション能力の低さや共感性が働きにくい事、こだわりの強さや感覚過敏などの特徴を持つ一方、知能や言語の遅れがない方です。

ロビソンさんが脳へ電磁場の放射を受けると、人の気持ちが理解できるようになったといいます。それも一般の理解できるレベルを突き抜けて、まるで「テレパシーが使えるのでは?」と思えるレベルまでその能力が高まったそうです。ただし、この効果が続くのは長くて数週間、短ければ15分だったそうです。

更に、治療が上手くいくほど、それまで上手くいっていた夫婦関係も破綻していきました。ロビソンさんの奥さんはうつ病で、アスペルガーのロビソンさんとは対照的に人の気持ちを必要以上に敏感に察知する為、両方が無いものを補い合う関係だったのです。しかしその関係が治療の為に崩れていったためです。

現段階ではTMS治療の効果は、発達障害そのものを改善するのかどうかは判っていません。
判っているのは、TMS治療が発達障害からくるうつ症状の改善になるという事です。そうは言うものの、今後、多くのデータが集まり、TMS治療から発展した何らかの方法で発達障害の方への朗報があるかもしれませんよね?

しかし、私がここで言いたいことは別にあります。それは「ある特性が劣っているという事は、ある特性が優れているのでは?」という事です。

この本にも書かれてあるように、「脳の領域を活性化するにはその対極である脳領域を抑える事」というのは、私なんかの素人にはとても腑に落ちます。抑える事で逆の領域が活性化する。もしかしたら、活性化しているという事は、何処かの領域が抑えられていることもあるのではないでしょうか?

私達は人より劣っていたり負けているところを見つけると、自分を「ダメなヤツ」って苛めてしまったりします。また、何か上手くいっている人は全てが上手くいってるようにも思えてきます。
しかし、人間は神様じゃないんだから、全てを選択する事は不可能です。何かを選択すれば何かは選択できない。劣っているところがあるなら優れているところがある。すべて上手くいっているようでも必ず足りないもの・満たされない事がある。それが人間なんじゃないでしょうか?(笑)