能力開発セミナーやスピリチュアルな講座などで「通常、脳は10%しか使われていないから、残り90%を開発すれば凄い能力が得られる」的なものがよくあります。
同時に「脳は100%とは言わないが、大部分は常に使用されている」ってのが最近のお話になっていたりもします。では、何故このような誤解が生まれたかと言えば、三つくらいの理由から生まれた誤解のようです。
一つ目がアインシュタインが言った言葉に「我々人間は潜在能力の10%しか引き出せていない」という言葉があり、それが「通常、脳は本来10%しか使われていない」という言い方がよく使われるようになった。これが一つ目。
二つ目は脳(動物実験)に電気刺激を与えたりしてどのように脳が使用されているのかを研究していたころ、刺激しても変化が見られない場所が多く見つかった(サイエントエリア)事が「通常脳は10%しか使われていない」になった。これが二つ目。
更に脳には神経細胞と言われる、実際に信号の伝達をしている細胞以外の「グリア細胞」と言われるサポート的な細胞(酸素や栄養素を運んだり、脳関門の役割)がある。そのグリア細胞の数が、当時神経細胞に比べて圧倒的に多いと考えられていて、これらの細胞が活動していないと誤解されて「通常脳は10%しか使われていない」になった。これが三つ目。
こういった誤解から、脳は通常10%しか使われていないと言われるようになったようです。
しかし、脳の大部分は常に使用されていることは解って来たものの、「脳は幾つになっても成長できる」事や「脳をより上手く使いこなすこと」とはお話が違いますよね?
こんな記事もありました。解りやすいところだけ引用します。
『神経細胞(ニューロン)が緻密な脳のネットワークを作って,記憶や学習という脳の中心的な役割を果たしているのに対し,グリア細胞はこれらを補佐する脇役と考えられてきた。グリア細胞の役割はニューロンに栄養を運んだり,軸索を絶縁して電気信号を送る手助けすることで,積極的に脳機能に影響を与えているとは考えられなかったからだ。
しかし,最近の研究から,グリア細胞の別の姿が見えてきた。グリア細胞はニューロンが置かれた状況をモニターしながら,グリア同士で情報をやりとりし,ニューロンのシナプス形成をコントロールしているらしい。記憶や学習という脳の高次機能は,実はグリア細胞によって支えられている可能性が高い。
少し込み入りますので以下省略
・・・・・脳のモデルが劇的に変わるかもしれない。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0407/glia.html 日経サイエンス
この他にもグリア細胞は神経細胞と密接に連絡を取り合っていて、その働きで脳の機能が左右されることを示した実験も他にあります。
要するに「脳は本来10%しか使われていないってことはない」「神経細胞の働きは解ってきた」ものの、それより数が圧倒的に多いグリア細胞の事も神経細胞とグリア細胞が連携をとることで脳の機能がどのような働きを見せるのかを解明するのはまだまだ始まったばかりのようです。
少し前までは、成人の脳細胞は毎日どんどん減って決して増えることはないと言われてましたよね?しかし、確か20年くらい前「海馬周辺の細胞が増える」を皮切りに、脳の様々な場所でニューロ新生(新しく生まれる事)が発見されています。
現時点で確実に認められている場所は二か所(多分現在は増えてます)ですが、まだまだ増えてくると予測されます。脳だけに限らず、例えば胃潰瘍の原因が、昔は「ストレスが原因」と言われていましたが、ピロリ菌の発見とともに「ピロリ菌が原因でストレスなんて関係ない」なんて言ってましたよね?ところが最近は「ピロリ菌だけが原因ではなくストレスが付加されると潰瘍ができる」に変更されています。
科学は素晴らしいと思いますが、少し前の定説が常に塗り替えられるので、あまり「科学的にありえない」って言い切るのはどんなものかな?って感じです。ですから、もしかすれば「通常はまだまだ人は脳の機能を充分使いこなしていない」が正解のように思われます。だって理解ができてもいないものを充分に使いこなすことなどできないですからね(笑)