しばらく行くと、村の人であろう母親達が集まっているのが見えてきます。

母親達に親子が近づくと、何やらこちらを見て話をしています。

「あれ見てよ、何てひどい親なの!子供を歩かせて平気なのかしら?」
「自分だけ楽をして子供を歩かせるなんて、考えられないわね。ロバに乗りたいなら子供も乗せてあげればいいのにねー」

「そうよ!二人で乗ればいいのに、馬鹿じゃない?」

それを聞いた男は思いました。
「確かに、そう言われてみればそうだな」と。
今度は子供と二人でロバに乗り、親子は町へ向かって歩き出しました。

しばらく行くと、今度はやっと町が見えてきました。その町の入口の川に架かった橋の修理をしている大工達が見えてきます。

大工達に親子が近づくと、何やらこちらを見て話をしています。

「おいおい、あの痩せたロバに二人も乗るなんて、ロバがかわいそうだろう」
「まったくだ。あんなに苦しそうに歩いているのに、何とも思わないのかね」

その大工の中の一人が「もっとロバを楽にしてやったらどうか?」と、男に言いました。

男は「確かに、そう言われてみればそうだな」と、その大工から余った棒をもらい、狩りの獲物を運ぶように、1本の棒にロバの両足をくくりつけて吊り上げ、それを息子と二人で担いで歩いていきました。

しかし、不自然な姿勢を嫌がったロバが暴れだしました。不運にもそこは橋の上であった為に、ロバは川に落ちて流されていってしまいました。

結局、親子は苦労しただけで、全く得しなかったというお話ですね。