有名なところでは「天狗にさらわれた寅吉少年事件」があります。江戸後期、少年寅吉はお祭りで壷売りの壷を見てたいたら、その壷に呑み込まれたっていうお話です。
そして数年後、寅吉は浅草の観音堂の前に現れ、「今まで天狗の世界で暮らしていた」と語りました。
勿論、こんなことは周りの人達は誰も信じませんでした。そこで登場するのが不思議大好きの平田篤胤さんです。
そして彼とその仲間たちが「この話は凄い話では?」と思い、寅吉を自分達の家に数年間住まわせて生活を共にしました。その間、寅吉は天狗の世界の風習や修行の仕方、文化や日常に関してかなり詳しく話しました。
これを平田篤胤さんは「仙境異聞」という本にしました。この本は世に出ると、たちまち江戸後期の大ベストセラーとなったようです。しかし、「仙境異聞」は書かれた後、長らくは高弟でも見ることもできなかった門外不出の書物だったと言われています。
当然、ただの「嘘つきな少年」として片付ける説もあります。しかしこの当時の平田篤胤さんは最高の国学者であり、最高の頭脳の持ち主と言われていたのも事実です。更に、その仲間たちもかなり優秀な方達であったようです。そんな方達が嘘だとは思えないほどの何かが、この少年が語る異世界のお話にはあったのではないでしょうか?